平成25年第1回定例会総括質問

平成25年予算委員会 総括質問 平成25年3月18日
台東区議会区民クラブ 伊藤萬太郎
人類社会は益々複雑で多様化の方向に向かいマスメディアの急速の発展もあって、愛や絆やモラルが希薄になり、無感情で冷淡な個人主義が横行する傾向に向かっています。その中に有って強化しなくてはならない人間教育の根本が今、忘れ去られようとしています。弱いものをいじめる習性は動物社会に顕著です。弱者を蔑む人間にはより動物に近い性格が宿ります。それがいつの間にか付和雷同しその低レベルな感情が拡大していきます。虐めは動物の本能に近い文化のない次元の感情だと思います。人間には理性が有りその習性を抑制して更に、より高度な慈しみや憐みで心を覆う事を与えられてこそ至福感に到達します。だからこそ哲学や教育が有り宗教が生まれ政治が有るのです。その根本を教える事こそが真の教育だと思うのです。
先ずは子供たちに悪いことはしてはいけないことを教えることなのです。NHKの連続ドラマの「八重の桜」が放映されていますが、その舞台の会津藩に「ならぬことはならぬものです」で名高い「什の掟」が有ります。私達も視察で会津藩校「日新館」は何度か訪れていますが子供教育の基本がここに明示されています。
同じ町に住む6歳から9歳までの藩士の子供たちは、十人前後で集まりをつくっていました。この集まりのことを会津藩では「什 (じゅう)」と呼び、そのうちの年長者が一人什長(座長)となりました。毎日順番に、什の仲間のいずれかの家に集まり、什長が次のような「お話」を一つひとつみんなに申し聞かせ、すべてのお話が終わると、昨日から今日にかけて「お話」に背いた者がいなかったかの反省会を行いました。
一、年長者(としうえのひと)の言ふことに背いてはなりませぬ
一、年長者にはお辞儀をしなければなりませぬ
一、嘘言(うそ)を言ふことはなりませぬ
一、卑怯な振舞をしてはなりませぬ
一、弱い者をいぢめてはなりませぬ
一、戸外で物を食べてはなりませぬ
一、戸外で婦人(おんな)と言葉を交へてはなりませぬ
ならぬことはならぬものです。
什により、一つ二つ違うところもありましたが(「戸外で婦人と言葉を交えてはなりませぬ」はすべての什にあったわけではないようです)、終わりの「ならぬことはならぬものです」は、どの什も共通でした。
そして、「お話」に背いた者がいれば、什長はその者を部屋の真ん中に呼び出し、事実の有無を「審問」しました。事実に間違いがなければ、年長者の間でどのような制裁を加えるかを相談し、最初はみんなの前に立って「無念でありました」とお詫びをする「無念」という一番軽い処罰です。「無念」という事は会津武士の子供としてあるまじきことをし、名誉を汚した事は申し訳ない、まことに残念であります。」という意味でした。二つ目は、竹篦(しっぺい)、三つ目は絶交。その他には手あぶり、雪埋めというように段階的に子供らしい制裁を加えました。子供にとって仲間たちから受ける審問は辛いものではありますが、「お話」も「制裁」もすべて大人たちに言われてつくったものではなく、子供たちが制約や強制を受けずに自分たち自身でつくり、「会津武士の子はこうあるべきだ。」ということを互いに約束し、励み合ったのです。正に、子供たちは会津藩という国の宝であります。国の未来を創る子供たちは悪いことをしてはいけない。したら必ず制裁が有ることを身と心で覚えていったのだと思います。そして国に対する誇りを自ずと体得していったのです。    
 政府の教育再生実行会議(座長・鎌田薫早大総長)は昨今のいじめと体罰が問題化した現状を鑑み道徳教育の教科化やいじめ対策法の制定、体罰禁止の徹底を訴えています。しかし根本には「命の尊さ」「規範意識」責任感」といった人間性の構築が重要で特に道徳教育の見直しが大切と考えます。指導要領に基づく現在は道徳の時間は年間35時間のみ、教科でなくて領域としての扱いになっています。別の領域の中でついでに教えるのではなくて特化して教科としてキチンと徳育の基本を教えることが大切だと思います。
私たちの昭和20年代の小学校の時代にはそうであったように、登校したら毎朝校庭に集まり朝礼を行います。校長先生の講話を聞き、全校でラジオ体操を行いました。感激した校長先生の講話の一つは凡そ60
年経った今でも覚えています。そこに連帯感を造成し心身を鍛えることに繋がります。また、音楽の時間数は多く当時の音楽の教科書の文部省唱歌を覚え大きな声で歌うことに掛け替えのない感動を覚えたものです。先日3月9日に東京オペラシティーにおいて東日本大震災復興支援コンサートでも天皇皇后両陛下と出演者、聴衆と皆で唱歌「ふるさと」を斉唱して感激の時間を過ごしたとの事でした。そんな教育環境と仕組みが家族の大切さ友達の尊さ、国に対する誇りを培う事になっていて、いじめや体罰の妄想は自然に消えていくのではないのでしょうか。私はこの機会に古に立ち返り大和魂の根本的な鍛練と実践の基礎を身に着けるべきと考えるのです。今、学校で教える歌の多くは、自由ばかりを誇張し個人や人生の夢想妄想をモチーフにした不確定な歌が取り入れられている様な気がしてなりません。従って規範規律に乏しいぬるま湯的な日常生活を容認されているのではないかと思うのです。
そこで、先ず「いじめ・体罰問題の解決に向けての取り組みに」ついてお伺い致します。下町人情の街、台東区としては教育ビジョン、下町台東の美しい心づくり推進方針など道徳教育も充実して規範意識も高いことは認識しています。更にいじめ体罰問題の直接的な対策に対しては様々な手法を講じていることは評価しています。その為にわが台東区の小中学校こそが全国の模範となるように率先して道徳教育の体制強化を図るべきと思います。また「ラジオ体操の発祥の地」台東区での毎朝の朝礼とラジオ体操の励行。更には、優先的に多くの(旧)文部省唱歌の導入を図るべきと考えますが如何でしょうか。 
次に、NPO法人との協働促進についてお尋ねいたします。
地域主権改革が叫ばれて民間活力導入に寄る行政の効率化、スリム化が求められています。正に直面する財政再建や人材危機の台東区に取っては民間と行政の中間を埋めわせて、自由な発想と多角的で専門的な区政運営が求められています。その為には今こそNPO法人との協働が最も重要で不可欠だと考えます。
平成25年1月現在、全国NPO法人は47、123。東京都では7、487。台東区では223団体の登録が有ります。
杉並区では312団体が登録されて、既に「杉並区NPO支援センター」を区が立ち上げてガイドブックを作成してポータルサイト「すぎなみ地域COM」を開設し、区民との協働に積極的に取り組んでいます。
他の自治体でも同様な動きが加速しています。
まず当区でも「台東区NPO法人ポータルサイト」の開設と「NPO法人紹介ガイドブック」を作成し然るべき関連施設などへの設置をしてNPOとの画期的な協働を推進していくべきだと考えます。ご見解をお尋ねいたします。
次に、結婚活動の支援体制の整備についてお尋ねいたします。
台東区での直接的な結婚活動や相談所の設置については民業の圧迫など難問が有ることは分かりました。しかし、今の台東区にとって伝統工芸、地場産業などの後継者問題や少子化対策、定住対策として結婚活動支援は必要不可欠で喫緊の課題だと思っています。私達の結婚相談活動も5年が過ぎました。区当局の各課からご支援を頂き今、確かな手応えを感じています。また、一昨年の第10回記念大会「秋の収穫祭」のふれあいパーティーには吉住区長が駆け付け、45名(男性22名、女性23名)の参加会員の前で「その気になった時が適齢期」という歴史に残る名言を残してくれました。今こそ区内外の婚活男女への支援体制を組むべきと考えます。例えば多くの婚活者を台東区に集合させて様々なイベントを仕掛けて商店や飲食店や地域の名所など様々なふれあいの場を提供します。今戸神社も縁結びの神様として全国から沢山の男女がお参りに来ています。いろいろな手法を通じて婚活を行うことは一方ではこのイベントが台東区の来街者の誘客と活性化に結び付けていく事になります。そこで台東区の婚活を広く強力にその可能性を高めていく為には、区内にある各種団体などの婚活組織の集合を図ることが得策と考えます。区に相談窓口を設けて婚活団体を登録して連携して効率的で広範囲に活動を結び付けていく事です。そこで「子育てするなら台東区」と同様なイメージとして台東区の政策として「結婚しやすい街・台東区」を事業提案します。
先ほどのNPO法人と同様に「台東区結婚相談ナビ(仮称・婚活横丁ナビ」のポータルサイトの制作や、「台東区結婚相談BOOK(仮称・婚活横町読本)」を制作して区役所内にミニ情報コーナーを設置して「受付窓口機能」を持たせるなどの支援体制を確立して頂きたいと思いますが如何でしょうか。区長のご見解をお聞き致します。
次に、医療費抑制対策についてお尋ねいたします。
23年決算総括ではジェネリック薬品の積極的な活用促進をお尋ねいたしました。今回は国保に加入している患者の診療データを活用した医療費抑制対策に対してお尋ねいたします。国民健康保険には加入者が3900万人で一所帯の平均保険料は年14万4千円で有ります。運営責任は市区町村が持ち、都道府県ごとの国保連が医療支払いを代行しています。そして保険料と別に年間8兆3千億円の税金が投入されています。
その仕組みは医療機関が治療、投薬内容や費用の書いた診療報酬明細書(レセプト)を各47国保連に送ります。その中身は病名や数値を患者ごとに検索・抽出できる形式で受け取ります。従って市区町村はその情報を元に分析し医療費抑制に生かす義務と責任が有ります。しかし、この11月時点でこれに取り組んでいる自治体は全国の207にしかすぎず、12パーセントに留まっているとの事です。
患者の診療データを活用して自治体独自が分析し無駄な受診の見直しや安いジェネリック薬品を勧めたり生活習慣病の悪化を防ぐ指導を行ったりすることが求められます。広島県呉市では2008年以降、システム会社に委託して一人一人の医療内容を解析し患者一人一人に通知を送ったり訪問して無駄な受診の是正や投薬の見直し指導で10年度では薬代1億1千万円、診療費1400万円を削減。呉市が支払う医療費の0,7パーセントを削減しました。国保の医療費総額に呉方式を当てはめると約620億円を削減できる計算になります。呉市には全国から年間100以上の視察が有りますがその流れは広がりを見せていないそうであります。
6割の国保連からは「自治体から要望が無いためにデータを提供していない。」と回答が有ったと聞いています。国は膨大な社会保障費の為に消費税を10パーセントにするという中、全国の市区町村がまずは医療費の抑制策に直ちに取り組むべきと考ますが如何でしょうか。台東区のこの問題への姿勢と現状の取り組みをお尋ねいたします。
続いては、商店街空き店舗対策についてお尋ねを致します。
過去に何度か質問していますが内容を変えて提案を致します。
台東区の生命線ともいうべき商店街の重要性は言うまでも有りません。商店街には人々の人情と文化と歴史が息づいていて街のコミュニティーと活性化の拠点と考えます。商店が一つ一つ消えて行けば店の人たちやお客さんたちとの会話や絆溢れる街の暖かさも消えます。多くの人々が買い物に行き来する事でその街に生きる人々の幸せや躍動感が醸成されます。
最近商店街にマンションを始めとした高層ビルが次々に建てられています。しかし、幾つかの商店が消えた後の1階はマンションのホールとなっています。一階には必ず店舗を設置することを義務付けるべきと考えます。確かにビルの建築主の多くは商店の経営者では無いでしょう。従って採算ベースを考えれば一階を店舗にして借り手が無ければリスクは大きくなり設置しない方が得策でしょう。そこで、建設相談の段階から行政が建築主と店舗開業の手引書や募集のお手伝いなどのソフト面の助言を行い誘導策を講じるべきと考えます。そこの場所に相応しいニーズの有る店舗のリサーチや検討。例えばものまちの若手クリエーターへの開業希望の空き店舗情報などの提供。また、結婚をきっかけに商店を二人で創業しようと考えるカップルへの開店の呼びかけなどです。また、行政としてはこのケースの特例的な開業準備資金の補助や融資も考えてあげるべきと思います。アンケートやリサーチ、手引書などの作成や配布。開店希望者に説明したり勧誘するなどの細部に亘る一括した事業を関連NPOに委託する事でより強力に共同が図られます。区長のご見解をお尋ねいたします。
次にアメ横商店街の高架下耐震補強についてお尋ねを致します。
昨年の3月にアメ横高架下の耐震化が新聞報道されました。
当事者のアメ横商店街には直接の話が無く寝耳に水の話との事でしたが早速高架下関係者で対応の窓口を一本化してアメ横・JR耐震工事協議会を立ち上げました。そこで現地ではJR東日本や国、東京都や台東区との協議出来る体制を整えている所です。区議会にもこの第一定例会に陳情が提出されて採択されたところです。一番身近な台東区の独自性を持った掛け替えのない商店街として全国にその名が轟くアメ横であります。しかし、この工事には多くの問題点が有りJR東日本との協議には様々な難航が予測されます。これから具体的な協議に入るところですが、アメ横協議会の要望を充分に斟酌してJRに対して国土交通省に対しても強力に働きかけをしてほしいと思います。一つの例で橋脚だけで1000本ほど存在しその柱が10㎝太くなります。部屋の広さも相当削られます。また、段階的に工事を行われると思いますが何か所に分けて期間はどのくらい掛かるかなど、様々な疑問点もクリアしていません。私たち区民クラブは委員会審議の前にアメ横に全員で現地視察しその後に協議会のメンバーとアメ横会議室で熱心な要望を受けました。とにかく、その時点では殆ど工事内容の詳細が全くされていないとの事でした。委員会の採択を受けて区当局が早速JR担当者を区役所に呼んで協議に及んだと聞いています。先ずは、現状で掴んでいるJRの耐震工事の内容について進捗状況を報告いただきたいと存じます。そして先ずは現状のアメ横らしさを残してほしいこと。工事に際しての一時移転の場所を考えてほしい。休業の際の営業補償も考慮に入れてほしい。JRの一方的で強制的なアトレのようなJR直営の商店街モール化は絶対反対などが主な要望と考えます。是非、JRとの協議に当たりましては区当局に立会いの下にこの様な要望を充分に考慮頂いて交渉頂きたいと存じますが如何でしょうか。区長の明解なご答弁をお願い申し上げます。以上で私からの総括質問は終了いたします。